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世界最古の磨製石器は日本かオーストラリアか

2026 10/18
国史
2026年8月19日2026年10月18日
黒曜石の海岸と、遠くの島々

前回、日本の局部磨製石斧がおよそ3万年前までさかのぼり、世界の通例(約1万年前)より突出して古いことを見ました。では、オーストラリアから「もっと古い」と報じられた石器は、どう考えればよいのでしょうか。

目次

砂の層に沈んだ年代

平成29年(2017)、オーストラリアのマジェドベベ遺跡から、約6万5000年前の磨製石器が出た、との報告がありました。その年代は、石器そのものではなく、石器が見つかった砂層を測ったものです。

学界では、この年代に疑問が出ています。砂層は安定した地層ではありません。シロアリの穴掘りや豪雨で、石器が下の層へ沈み込めば、実際より古いものとして特定されてしまいます。

日本は、安定した遺跡から出ている

日本の初期の磨製石器は、偽石器が混じる心配のない、安定した遺跡から出ています。年代の例は次のとおりです。

  • 貫ノ木遺跡(長野県)、石の本遺跡(熊本県)——約3万8000年前
  • 上萩森遺跡(岩手県)、八風山Ⅱ遺跡(長野県)、瀬田池ノ原遺跡(熊本県)——約3万7000年前

3万6000年前まで下げると、出土例はさらに増えます。後期旧石器時代の3万5000年前以前に限っても、磨製石器の出た遺跡は八十一か所。北海道から九州、種子島(鹿児島県)まで広がっています。

オーストラリアでは、マジェドベベから石器文化が連続して発展し、各地へ広がった形跡が見当たりません。日本は列をなし、島々まで届いています。

世界の開始年代と比べる

世界で一般的に磨製石器が使われ始めるのは、およそ1万年前です。比較的古い地域でも、日本より遅れます。

地域磨製石器の開始(およそ)
日本列島3万8000〜3万年前
オーストラリア(マジェドベベ)6万5000年前(砂層年代。疑問あり)
オーストラリア中部2万6000年前
シベリア2万2000年前
中国1万5000年前
朝鮮半島7000年前
世界の通例1万年前

東アジアだけ見ても、中国より約1万3000年、朝鮮半島より約2万1000年、日本が先行しています。世界では磨製石器と土器、農耕や牧畜の始まりが重なることが多いのに、日本では磨製石器だけが著しく先に出ています。

のちの弥生時代には、稲作は中国が先行し、列島の人びとはその最先端を学びます。先土器の石器に限れば、日本列島のほうが周辺より進んでいた、ということです。

海を渡り、黒曜石を運ぶ

遠隔地との行き来も盛んでした。伊豆諸島の神津島で採れる黒曜石が、南関東、山梨、長野で見つかります。九州の黒曜石は、沖縄や朝鮮半島でも出ています。島と島を往復して物を運んだ例は、同じ時期の世界ではほかに確認されていません。先土器時代の人は、最先端の航海術を身につけていた、といえます。

平成28年(2016)には、沖縄県南城市のサキタリ洞から、約2万3000年前の釣針が出ました。それまで最古とされたパプアニューギニアの約1万8000年前を上回ります。

国際的に信頼できる方法で年代が特定された磨製石器としては、日本から出土したものが世界最古です。砂の層に沈んだ可能性のある一点より、安定した遺跡に列をなす八十一か所のほうが、技術の広がりを語ります。

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