前回の記事では、神域に入る前の最初のデトックスアクション「手水(てみず)」の作法と、そのルーツであるイザナギノミコトの禊(みそぎ)の神話について学びました。
手水舎で心身をきよめたら、いよいよご神前へと参道を進んでいきます。 今回は、参拝の直前におなじみの「お賽銭(さいせん)」と、頭上にある大きな「鈴」を鳴らす意味、そして私たちが歩く「参道」そのものの秘密について勉強していきます!
「お参りするとき、参道の真ん中を歩いちゃダメなのはなぜ?」 「お賽銭の『賽』って、そもそもどういう意味?」 「あの大きな鈴をジャラジャラ鳴らすのはどうして?」
これらは、日頃何気なく行っているお参りの時間をガラリと変えてくれる素晴らしい歴史ロマンが詰まっています。試験に出る重要ポイントとともに、今回もギュッと整理してわかりやすく解説します!
1. ご神前へと続く「参道(さんどう)」の歩き方と玉砂利の秘密
お参りのために歩く「参道(さんどう)」ですが、実はただの通路ではなく、すでにここから神聖な世界が始まっています。
1-1. 参道の真ん中を歩いてはいけない理由
参道を歩くときは、「中央を少し避けて、左右の端を歩く」のが正しい作法です。 なぜなら、参道の真ん中は「正中(せいちゅう)」と呼ばれ、「神様の通り道」とされているからです。私たちは神様の邪魔をしないよう、敬意を込めて端を歩きます。
※ただし、拝殿の正面でお祈り(拝礼)をするときは、真ん中に立って堂々とお参りして問題ありません。
1-2. 参道に敷かれた「玉砂利(たまじゃり)」の意味
神社に行くと、歩くたびに「ジャッ、ジャッ」と心地よい音が響く細かい石が敷き詰められていますよね。これを「玉砂利(たまじゃり)」と呼びます。
この名前には、非常に深い意味があります。
- 「玉(たま)」:神道において「魂(たましい)」や「御霊(みたま)」に通じる非常に神聖な言葉であり、「立派な」「美しい」という意味を持っています。
- 「砂利(じゃり)」:細かい石を意味する「さざれ(細石)」という言葉がなまったものです。
つまり玉砂利とは、「魂のように美しく清らかな細かい石」という意味になります。 見た目が美しいだけでなく、雨の日の泥はねを防ぎ、歩くときの靴音によって自分自身の雑念を払い、境内の清浄を保つ(邪気を祓う)という非常に大切な役割を持っています。
1-3. 絵馬掛けのルーツ
参道を進むと、たくさんの願い事が書かれた「絵馬(えま)」が掛けられているのを目にします。 昔々、人々は神様へのお願い事や感謝を伝える際、本物の「馬(神馬・しんめ)」を神社に奉納していました。しかし、誰もが本物の馬をプレゼントできるわけではありません。 そこで、時代が下るにつれて、木板に馬の絵を描いた「絵馬」を奉納するスタイルへと簡略化されていったのです。
2. お賽銭(さいせん)のルーツは「お米」だった!
お賽銭箱の前に行くと、私たちは小銭を投げ入れますよね。しかし、昔は神社にお金を納める習慣はありませんでした。
2-1. お賽銭の「賽(さい)」の意味
お賽銭の「賽(さい)」という漢字には、「神様からの恵みに対するお礼・感謝」という意味があります。 つまりお賽銭とは、「神様、お願いを叶えてください!」というおねだり料ではなく、「日々無事に暮らせていることへの感謝とお礼」として捧げるものなのです。
2-2. お米がカタチを変えてお金になった
大昔の日本においては、神様への最も神聖なお供え物は、命の源である「お米」でした。
- 散米(さんまい):昔は、お祭りの際にお米を神前に直接パラパラと撒いて捧げていました。
- おひねり:やがて、お米を白い紙に優しく包んだ「おひねり」を作って奉納するようになりました。
- 賽銭(さいせん):時代が進んで貨幣(お金)が全国に普及すると、お米の代わりに金属のお金をお供えするようになり、散米から「散銭(さんせん)」へ、そして現在の「賽銭」へと変化していきました。
お金を投げ入れるという現代の動作は、かつて神前にお米を「撒いて」お供えしていた頃の名残りなのです。
3. 参拝で「鈴(すず)」をジャラジャラと鳴らす神秘的な意味
お賽銭箱の上を見上げると、太い紐の先に大きくて丸い鈴(本坪鈴・ほんつぼすず)が吊るされています。
鈴の音は、古くから「すがすがしく神秘的で、神霊(神様の魂)を招き、周囲の邪気をきれいに祓うもの」として、神道において極めて大切にされてきました。
3-1. 古代の巫女と鈴
古代の日本では、神様にお仕えする巫女(みこ)が、鈴のついた道具を手にして神がかり(神様を自分に宿らせる儀式)を行い、神様の言葉を人々に伝えていました。 その歴史を裏付けるように、鈴のついた鏡(鈴鏡)を持った女性の姿をした埴輪(はにわ)が、全国の遺跡からたくさん出土しています。
現在のように、神社の軒先(社頭)に大きな鈴が吊るされ、参拝者が自分で鳴らせるようになったのは、中世(鎌倉・室町時代)の以降のことだといわれています。
4. 【古事記トピックス】天岩戸でアメノウズメが鳴らした「鈴の矛」と爆笑ダンス
ここで、神道において「鈴」と「踊り(お祭り)」がどれほど深く結びついているかを示す、古事記の超有名で面白いエピソードをご紹介します!
太陽の神様・天照大御神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸(あめのいわと)に隠れてしまい、世界が真っ暗闇のピンチに陥ったとき、岩戸の前で体当たりの大活躍をしたのが芸達者な女神・天宇受賣命(アメノウズメノミコト)です。
平安時代にまとめられた歴史書『古語拾遺(こごしゅうい)』によると、アメノウズメは「鈴のついた矛(ほこ)」を手にして、それをシャリンシャリンと鳴らしながら、天岩戸の前で激しく踊り狂いました。
このときのアメノウズメのダンスは、古事記によると本当に型破りなものでした。
- 髪に笹の葉を飾り、胸元を大胆にはだけ、なんとスカートの紐を腰の下まで押し下げて、半裸のような状態でひっくり返した桶(うけ)を足でドンドンと踏み鳴らしながら、激しくお尻を振って踊ったのです!
これを見た八百万(やおよろず)の神々は、お腹を抱えて「ワハハ!」と大爆笑しました。 「外がなんだかもの凄く楽しそうだぞ?」と気になったアマテラスが岩戸の隙間をそっと開けたことが、世界に光を取り戻すきっかけとなったのです。
アメノウズメが鳴らした「鈴の音」と、神々を笑顔にした「楽しい踊り」こそが、日本の神楽(かぐら)や、お祭りのルーツであり、私たちがご神前で鳴らす鈴の「神様をお招きして喜んでいただく」という精神の原点になっています。
本日の学び直しまとめ
今回は、拝殿の前に立つ私たちが知っておくべき、参道、お賽銭、鈴の歴史を勉強しました!
- 参道の真ん中は神様の通り道である「正中(せいちゅう)」。歩くときは端を歩くのがマナー。
- 参道の「玉砂利(たまじゃり)」は「魂(美しいもの)の細かい石」という意味。泥はねを防ぎ、境内の邪気を祓う。
- お賽銭(さいせん)の「賽」は「神様への感謝とお礼」の意味。かつてお米を撒いていた「散米」がお金に変わり、「散銭」を経て「賽銭」となった。
- 鈴(すず)の音には、神様を招き、邪気を祓う神秘的な力がある。
- 【古事記トピックス】天岩戸神話において、アメノウズメノミコトが鈴のついた矛を鳴らし、神々が大爆笑する型破りなダンスを踊ったことが、神楽(お祭り)と鈴の使われ方の起源となった。
お賽銭をそっと納め、鈴を涼やかに鳴らすとき、かつてお米を撒き、鈴を振って笑いながら神様をお迎えした古代の人々と同じ清々しい気持ちになれますね。
次回は、いよいよ最も大切な動作である「12:拝礼、拍手の仕方について教えてください」をお届けします。 「二礼二拍手一礼」の正しいタイミングや手のずらし方など、一生物の参拝マナーを完全網羅して解説します。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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