その記念すべき第1弾(通算10回目)のテーマは、参拝する前に必ず行うお清めアクション「手水(てみず・ちょうず)」です。
「ただ手を洗って口をすすぐだけじゃないの?」 「実は、あの何気ない動作には古事記の壮大な神話が隠されているって本当?」 「最近よく見る『柄杓(ひしゃく)がない手水』ってどうやればいい?」
毎日多くの人が何気なく行っている手水ですが、そのルーツと正しい作法を知ると、神社にお参りする際の一歩目の気持ちよさが劇的に変わります。今回も試験に出るポイントや面白い歴史・神話のエピソードをギュッと整理してお届けします!
1. 手水のルーツは古事記の「禊(みそぎ)」にあり!
神社にお参りする前に手と口をすすぐ理由は、神様に対面する前に自分の心と体の「けがれ」を落とし、清らかにするためです。
この「水で身を清める」という行為は、神道において最も重要な「禊(みそぎ)」という儀式が簡略化されたものです。そしてこの禊のルーツは、古事記に登場する以下の神話にあります。
イザナギノミコトの黄泉の国からの生還
はるか昔、日本の国を生み出した男の神様・伊邪那岐命(イザナギノミコト)は、亡くなった妻の伊邪那美命(イザナミノミコト)に会うために、死者の国である「黄泉の国(よみのくに)」へと旅立ちました。
しかし、そこで恐ろしい怪物たちに追いかけられ、命からがら現実世界へと逃げ帰ってきます。
死者の国の邪気や、恐ろしい「穢れ(けがれ)」を体に浴びてしまったイザナギノミコトは、こう言いました。
「私はたいそう汚くて不浄な国へ行ってしまった。だから、私の体に浴びた汚れを清めるために、禊(みそぎ)をしよう」
こうしてイザナギノミコトは、身に着けている衣服や装飾品をすべて脱ぎ捨て、清らかな川の清水に深くつかって、体に溜まったけがれを洗い流したのです。これこそが、日本の歴史における「最初の禊(みそぎ)」であり、現代の「手水」のルーツなのです。
【古事記トピックス】顔を洗ったら、超大物の「三つ子の神様」が生まれた!?
ここで、古事記の中でも屈指の人気を誇る、最高に面白いエピソードをご紹介します!
衣服を脱ぎ捨てて水に入ったイザナギノミコトが、体のあちこちを洗い流すたびに、なんとそこから次々と新しい神様たちが誕生していきました。そして最後に、イザナギノミコトが「ご自身の顔」を洗い清めたとき、日本神話の主役となる超・大物神様たちが一気に誕生したのです!
- 左の目を洗ったとき: 太陽を司る最高神・天照大御神(アマテラスオオミカミ)が誕生!
- 右の目を洗ったとき: 夜や月の国を司る神・月読尊(ツキヨミノミコト)が誕生!
- 鼻を洗ったとき: 海や嵐を司る力強い神・素戔嗚尊(スサノオノミコト)が誕生!
この三柱の神々は、神々の中でも最も貴い存在として「三貴子(みはしらのうずのみこ)」と呼ばれ、古事記のストーリーの中心になっていきます。
私たちが手水舎で「目」を洗うことはありませんが、「水で顔(手や口)を洗って清める」というアクションが、ただの掃除ではなく、新しい生命や神聖なパワーを生み出すクリエイティブな行為であるという、神道において非常に大切にされている思想がこのお話に現れているのです。
2. 川や海から「手水舎(てみずや)」への歴史の移り変わり
今でこそ立派な屋根がついた「手水舎」がありますが、昔は建物としての手水舎はありませんでした。
2-1. かつては「川」や「海」で直接禊をしていた!
古い神社の多くは、清らかな川や海の近くに建てられています。昔の人々は、神社にお参りする直前に、近くを流れる川(御手洗・みたらし)や海へ直接入って身を清めていました。
- 有名な代表例:伊勢の神宮の「五十鈴川(いすずがわ)」 伊勢神宮の内宮(皇大神宮)には、今でも川のほとりに美しい石畳が敷かれた「御手洗場(みたらしば)」があり、参拝者は手水舎の代わりに五十鈴川の清流で直接、手と口を清めることができます。
2-2. 鎌倉時代以降:手水鉢(ちょうずばち)への変化
時代が下り、鎌倉時代以降になると、毎回川や海に入るのは大変であることや、インフラの整備によって、参道に水を溜めておくための石の器(手水鉢)が置かれるようになりました。 これが簡略化されて現在の「手水舎」の形になり、私たちはいつでも手軽に清らかな水で身を清めることができるようになったのです。
手水舎の看板に「洗心(せんしん)」や「浄心(じょうしん)」と書かれていることが多いのは、「ここで手口を洗うとともに、自分の心の中もしっかりと洗い清めてくださいね」という、神様からの優しいメッセージなのです。
3. 【一生物の作法】正しい手水のやり方(完全版)
それでは、神社検定でもほぼ毎回手順の並び替え問題として出題される、正しい手水の作法をおさらいしましょう!
手水の最大のポイントは、「最初の1杯(最初にくんだ水)だけで、すべての動作を終わらせる」ということです。途中で何度も水をくみ直さないのが、粋でスマートな作法です。
3-1. 柄杓(ひしゃく)がある場合の5ステップ
- 右手に柄杓を持ち、水をくむ
- まずは右手に柄杓を取ってたっぷりと清水をくみ、その水の3分の1ほどを左手にかけて清めます。
- 柄杓を左手に持ち替える
- 今度は左手に柄杓を持ち替え、同様に右手に水をかけて清めます。
- もう一度右手に持ち替え、口をすすぐ
- 柄杓を再び右手に持ち、左のひらに少し水をためます。その水を口に含んで、静かに口をすすぎ、そっと吐き出します。
- ※注意:柄杓に直接口をつけるのは絶対にNGです!
- 左手をもう一度流す
- 口をすすぐ際に使った左手を清めるために、残ったお水を左手に軽くかけます。
- 柄杓の柄(持ち手)を洗い流し、元の位置に戻す
- 最後に、柄杓を両手で垂直に立てるようにして、中に残ったお水が柄(持ち手)を伝って流れ落ちるようにします。これにより、自分が触った持ち手部分が綺麗に洗い流されます。
- 流し終えたら、柄杓を伏せて元の場所にそっと戻します。
3-2. 近年増えている!「柄杓がない場合」の作法
感染症対策などの理由から、最近は柄杓を置かず、竹筒や龍の口からチョロチョロと水が流れ落ちる流水タイプの手水舎が増えています。柄杓がない場合も慌てず、以下の手順で行いましょう。
- 両手を水で洗い流し、しっかりと清める。
- 両手で器(くぼみ)を作り、そこへ流れ落ちる水を受け止める。
- 手に受けた水を使って、口を静かにすすぐ。
- 最後にもう一度、両手を水で洗い流して清める。
※どちらの場合も、それぞれの神社の指示書きやアナウンスがある場合は、その指示に従って気持ちよく行いましょう!
本日の学び直しまとめ
今回は、神域に入る前の最も神聖な第一歩「手水」について勉強しました!
- 手水のルーツは、古事記でイザナギノミコトが黄泉の国から生還した際に行った「最初の禊(みそぎ)」。
- 【古事記トピックス】イザナギが顔(左右の目と鼻)を洗ったとき、神道の主役である三柱の最高神「三貴子(天照大御神・月読尊・素戔嗚尊)」が誕生した!
- 昔は川や海に直接入ってお清め(御手洗)をしていたが、鎌倉時代以降に手水鉢を用いるスタイルに変わっていった。
- 手水舎の別名である「洗心」「浄心」は、手口だけでなく心も清めるという意味。
- 正しい作法は、最初の1杯の水だけですべての工程(左手→右手→口→左手→柄杓の柄)を流れるように行うこと。
ただ手を洗うだけでなく、「私もいま、イザナギノミコトと同じように、神話の世界の清らかな水で心と体を生まれ変わらせているんだな」と感じながら手水を行うと、その後の参拝が格段に清々しいものになりますよ。
次回は、「11:お賽銭と参拝の際に鳴らす鈴の意味について教えてください」をお届けします。 お賽銭箱の上にあるあの大きな鈴(本坪鈴)を鳴らす深い理由や、お金を納める本当の意味について、わかりやすく解説します。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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