尖った石の前に、榊が置いてある
墓地の通路を歩いていると、隣どうしの墓なのに、頭の形だけが違う石があります。平らに切られた石の横で、頂が空へ向かって尖っている。神道式と仏式で、お墓の形に大きな違いは見られないのが一般的です。それでも地域によっては、差がはっきり残る場所もあります。神道式の特色として語られるのは、墓石の頭部が平らでなく、尖っている形が多いことです。
尖った石のほかにも、自然石をそのまま用いたものや、培覆型と呼ばれる、土饅頭の形をした墳墓もあります。正面に目を落とすと、「○○家奥都城(おくつき)」と刻まれていることがあります。奥都城には「奥の城」という意味があり、外部から守られた深いところを表す、とも説明されます。城の字については、奥の城だとする見方と、秘を覆う「沖」の音に取る見方とがあります。一つの石の字が、城とも沖とも読まれてきた。
墓前には、御幣が立てられることがあります。線香を立てる代わりに、榊を供える台が置かれていることもあります。線香の代わりに、緑の枝が、石と人のあいだに立ちます。
尖った頭部は、視線を空へ抜きます。正面の奥都城は、地面の側に残ります。奥の城とは、外から守られた深い場所のことでもあります。城の字を沖と読む見方は、秘されたものを、水の向こうへ覆うイメージを字に重ねます。どちらの説に立っても、墓は、奥へ安置するための城です。御幣の紙が風に細く切れ、榊の台だけが石の前に残ります。火を使わなくても、その墓がどの作法で守られているか、通りがかりの足は知ります。自然石は山の形をそのまま墓にし、土饅頭の培覆型は、盛った土そのものを墳墓にします。尖頭の石と並んで、それらも神道の墓の姿です。
生前の名の下に、尊称が添う
亡くなった方の名は、霊号(れいごう)として御霊舎に記されます。ご生前のお名前の下に、尊称を添える。男性なら「○○大人命(うしのみこと)」、女性なら「○○刀自命(とじのみこと)」。大人命と刀自命は、壮年の方に用いる例です。
年齢によって、添えることばは変わります。児童には童子、童女。若い方々には比古、比売。彦、姫とも書きます。老年には老叟、老女。場合によっては、尊称を重ねず、「○○命(みこと)」とだけ記す例もあります。
命は、神々の名にも用いられてきた語です。故人を尊ぶ気持ちが、霊号の末尾に残っています。年齢と性別に応じて呼び分けるのは、生きていた時間の長さに、ことばを合わせるためです。壮年の大人、幼い童、若い比古、年を重ねた老叟。御霊舎の中では、それぞれの呼び方が並びます。
棚の前では、生前の名の下に尊称がつき、大人命、刀自命、あるいは命の一字だけが、神名と同じ末尾を家の中に用意します。童子や童女と記された札の前では、幼かった年数が尊称のなかに残ります。比古、比売、彦、姫と記された札は、まだ壮年の大人とは呼ばれない人の席です。老叟、老女は、長く生きた人への呼び方です。霊号は、死んだあとで別人の名前を授ける儀式というより、生きた年月に敬意の接尾を添える書き方です。
墓は、境内にも公営の地にも立つ
神道の墓が立つ場所は、一つに決まりません。神社の境内にある墓地では、祭りの音が遠い日にも、木のそばに石が残ります。公営の墓地では、尖った頭と平らな頭が、区画の規則のなかで隣り合います。神葬祭のために開かれた霊園もある、と説明されることがあります。そこでは、奥都城の字が最初から想定された石が並びます。合祀によって墓石がともにまつられる場合は、一つ一つの石を立てられない御霊が、共有の墓のなかへ迎えられます。どの形を選び、どこに置くかは、地域の習慣と、その墓地の規定に従います。石の好みより先に、土地のきまりが人を待ちます。
尖った頭部も、自然石も、土饅頭の墳墓も、正面の「奥都城」も、眠る人を奥の城に置く、という同じ気持ちの別の姿です。御霊舎に記された霊号は、その石よりも先に、家の中で毎日拝まれます。
その家が、いつ神社へ戻ってよいのか。墓の字を読み終えたあとに残るのは、忌中の神社参拝です。


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