更地の中央に、祭壇が組まれる
基礎の線もまだ薄い土地の、まんなかに祭壇が置かれ、神籬(ひもろぎ)が立っている朝があります。家を建てることに結びついたお祭りは、いくつかあります。主なものは、地鎮祭(じちんさい)、上棟祭(じょうとうさい)、竣工祭(しゅんこうさい)です。それぞれに大きな意味があり、どのお祭りも、基本の流れは同じです。修祓に始まり、直会で終わります。神職に出席してもらうことも、自分たちで行うこともあります。
地鎮祭は、工事を始めるにあたって土地の神様に挨拶し、土地を祓い清め、工事の安全と守護を祈るお祭りです。「とこしえのまつり」とも、「地祭」とも呼ばれます。まつるのは、大地主神と、その地域の守護神である産土神(うぶすながみ)です。祭場は、工事をする場所。その土地の中央に祭壇を設けます。神籬を立て、ここを清らかな場所とすることもあります。
土地の神様への供えとして、鎮物(しずめもの)を埋めます。切麻(きりぬさ)や米、塩、酒で祓い清めます。「忌」とは、神聖な、という意味です。地主と施工者が、忌鎌、忌鍬、忌鋤を手に、草を刈り、土を掘り起こす所作をします。鎮物は神籬とは別で、鉄板で作られた人形や、刀、盾、矛、鏡などが納められていることがあります。中身は、地域によって違います。散供のように、この祭りで特に目立つ所作もあります。まだ建物のない地面に、神の席と、地中へ返す供え物と、神聖な刃物が、同じ朝に揃います。
更地には、まだ部屋の匂いがありません。風が、祭壇の白さに直接当たります。中央に祭壇を置くのは、工事をする土地のまんなかを、その朝の神の席にするためです。神籬が立てば、建物のない地面が、清らかな場所として区切られます。大地主神と産土神をそこに迎えてから、土を動かし始める。土地そのものに神が宿る、という感覚のなかで、工事の前に断り、安全を祈ってきました。祭壇の二柱は、これからの物音を、土地の主へ先に伝えるための席です。
鎌と鍬と鋤の所作は、最初の一刈りと最初の一掘りを、神の前で示すためのものです。神聖を意味する「忌」の字が刃物に付くのは、その一掘りを祭りの行為にするためです。鎮物を地中へ納め、切麻と米と塩と酒で祓い、散供を終えたあと、直会で神と人が同じ場に戻ります。更地は、その朝のうちに、挨拶を済ませた土地になります。神職が立つ日も、家族と施工者だけで踏む日も、修祓から直会までの骨格は同じです。上棟と竣工も、この骨格を借りて、別の日に繰り返されます。
棟が上がる日と、屋根が閉じる日
上棟祭は、柱が立ち、棟木を上げるときに行われます。建物の神様、工事の安全、建物の堅牢を祈ります。木造の家でも、鉄筋コンクリートのRC造でも、祈るところは同じです。「棟上げ」「建前」とも呼ばれます。その呼び方は、棟木が屋根の要に渡る瞬間を、工事の人々の言葉で言ったものです。骨組みが空に届いた日、建物はまだ部屋のない高さで、一度、神の前に立たされます。
竣工祭は、建物が完成したときに行われます。「新築祭」や「清祓」とも呼ばれます。新しい建物の外も内も祓い清め、建物が末永く丈夫であることと、そこに住む人の繁栄を祈ります。地を鎮め、棟を上げ、屋根と壁が閉じたあとで、ようやく人が住む家になる。三つのお祭りは、工事の工程に、挨拶の段を合わせています。地鎮の朝に埋めた鎮物は地中に残り、上棟の日に上げた棟木は空に残り、竣工の日に祓った部屋へ人が入ります。修祓から直会までを三度繰り返すことで、家は土地の神と、建物の神と、住む人のあいだに座を得ます。神職に来てもらう日も、自分たちで行う日も、この順番は変わりません。直会の杯が、風の残る更地で回ったあと、工事の音が始まります。
棟が上がる日には、棟札に誰の名を書き、槌をどう打つのか。家ができたあと、神棚をどこに迎えるのか。その先は、上棟の神々と、新しい家の棚です。


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