食料を安定して作れるようになると、人は定住し、都市を作り、神殿を建て、やがて古代の国家を作りました。貧富の差が生まれ、国を統率する王が現れます。まつりや戦いに使う青銅器(銅と錫などで作った硬い合金)が作られ、文字も使われるようになりました。国家は、盛んと衰えを繰り返します。
世界の文明の特色は、このあたりにそろいます。食料、都市、王、青銅、文字。そして、国が栄えては滅びることです。
ナイルが、境界を消した
エジプトでは、ナイル川が毎年氾濫しました。流域に養分が行き渡るので、農業が発達します。いっぽう氾濫は土地の境界を分からなくするので、測量の技術が発達しました。氾濫の時期を知るために天文学が生まれ、十進法や、1年を365日とする太陽暦が作られ、象形文字の神聖文字(ヒエログリフ)も用いられました。
紀元前3000年ころには統一王国ができ、王(ファラオ)が絶大な権力を握って、巨大なピラミッドや神殿を建設しました。
神聖文字は、主に碑文などに用いられました。約七百文字が知られ、二十四の子音文字があります。きわめて具象的で、装飾的です。紀元前3100年ごろから、約3500年間用いられました。
二つの川と、粘土の文字
ティグリス川とユーフラテス川に挟まれたメソポタミア(現在のイラク)では、養分の豊富な土地を使って農耕が発達し、紀元前3000年ころ、いくつもの都市国家が生まれました。城壁に囲まれた都市には、神殿や王宮が作られます。楔形文字が、粘土板に刻まれました。
楔形文字は、葦などで作った筆記具で粘土板に記した文字で、石板や金属板に彫ることもありました。初めは象形文字でしたが、しだいに記号化されて楔の形になり、表意文字から表音文字へ変わっていきます。古代エジプトの神聖文字と、この楔形文字とが組み合わさって、のちにアルファベットへ発展していきます。
月の満ち欠けから太陰暦が発明され、一週間を7日とする制度が生まれました。時間にも使う六十進法も、ここで発明されています。紀元前18世紀、メソポタミアを統一したハンムラビ王は、「ハンムラビ法典」を制定しました。
| エジプト | メソポタミア | |
|---|---|---|
| 舞台 | ナイル川。毎年の氾濫 | ティグリス川とユーフラテス川(現在のイラク) |
| 文字 | 神聖文字(ヒエログリフ) | 楔形文字。粘土板に刻む |
| 数と暦 | 十進法。1年365日の太陽暦 | 六十進法。太陰暦。7日で一週間 |
| 国のかたち | 紀元前3000年ころ、統一王国。王はファラオ | 紀元前3000年ころ、都市国家。紀元前18世紀にハンムラビが統一 |
ハンムラビ法典から
『ハンムラビ法典』の一部を、要約すると次のようになります。同じ害を、同じ害で返す定めと、身分によって償いが変わる定めとが、ならんでいます。
| 条 | 定め |
|---|---|
| 一条 | 他人を殺人の罪で訴えても、その罪を証明できないときは、訴えた者が死刑になる |
| 196条 | 他人の目を潰した者は、その目を潰される |
| 199条 | 奴隷の目を潰し、あるいは骨を折った者は、その奴隷の値段の半分を支払う |
| 200条 | 同じ身分の他人の歯を折った者は、その歯を折られる |
文字がある時代、ない時代
文字による歴史の記録がなく、考古学や地質学などが主な研究の領域になる時代を、先史時代といいます。文字の記録によって歴史を研究できる時代が、歴史時代です。日本では、先土器時代から弥生時代までが先史時代で、大和時代以降が歴史時代とされます。
エジプトとメソポタミアが文字と統一へ進んだころ、インダス川と、黄河・長江では別の都市と農耕が育っていました。

